なお、人間は「希死念慮」(「死にたい」という気持ち)を
抱えているだけの状態では、死への恐怖に打ち勝ち、なおかつ、
生存本能という最強の本能に逆らって自殺を決行することは難しい。
現実には、フィクションで描かれるような、理性を保った状態での
「覚悟の自殺」などというものは非常に稀であり、たとえば武士の切腹も、
厳密に言えば自殺ではなく処分・処刑の一形態に過ぎない。
ところが、うつ病になると脳がエラーを起こし、希死念慮に加えて、
「今すぐ死にたい!」「今死なないと!」という強い焦燥感を伴う
抑えきれない衝動に突然見舞われることがある。
この「自殺衝動」という“症状”は、死への恐怖心や生存本能をも
軽く凌駕するほど強烈であり、日頃どんなに家族思いの人であっても
遺される家族の気持ちを考えることすらできなくなってしまう。
そのメカニズムを熟知している精神科医ですら、自身がうつ病になると
しばしば自殺に至るほどであり、ひとたび自殺衝動が生じてしまうと、
知識や理性・精神力で抑えることは不可能。
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