●『やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る』 (サイエンス・アイ新書)より
天然物信仰に陥る原因のひとつに、「自然は人間の身体に悪い物は作らないはずだ」という思い込みがあります。
しかし、自然は人類のために存在しているわけではありません。
自然が人にとって都合のいい物だけ作り、都合の悪い物は作らないなどと、それこそ都合の良いことを考えてくれるわけはありません。
そういう誤った認識こそ人類の驕りではないでしょうか。
たとえば、多くの人が忌み嫌っている農薬は、「人間にとっては安全性が高いが、作物に悪影響を与える植物や昆虫や微生物などには有害」という選択的な化合物です。
自然が作る殺虫剤は数多くありますが、それを真似て、人にとって都合の良い化合物を作る能力が人間にはあります。
その能力を最大限に生かしてできたのが農薬です。
自然は人間を特別視するいわれがないので、人間だけに都合の良い化合物は作ってくれませんが、人間にはそれができるのです。
昨今、「無農薬」「減農薬」「有機栽培」などといって、様々な農薬代替物が使われており、一般に、無農薬栽培された野菜の方が
そうでない野菜より安全だと信じられていますが、農薬代替物は、農薬ほど厳密に安全性のチェックがなされているわけではありません。
木酢液のように、かえって農薬よりも危険な物もあります。
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